IN THE STATION.






「もしかすると俺、お前のことあんまり好きじゃないのかもしれねえ」

「ああ?」

「たまにイライラするし」

「…そうなのか」

「ああ、見てるとな。何か、ノート取ってるときとか本読んでるとか」

「そんなとこ見てるなよ」

「うん、そんでそういうこと言われるとなんかまた」

「イライラするのか?」

「そうなんだよな」

「知らなかった…」

「言ったことねーもん。知るわけねえだろ」

「なんで」

「分かんねえ。でも何か…日によったり」

「女の生理前みたいだな」

「…例え方がやらしいぞ」

「いや、でもそういうもんなんじゃないのか」

「そうかもしんねえ」

「じゃあ俺はどうすればいいのかなあ」

「何もすんな。何もしゃべんな」

「…それはなかなか辛い」

「だろ、だから困んだよ」

「困らないで欲しいなあ」

「無理」

「じゃあ隼人が俺に近づかないで、見ないで、喋りかけなきゃ良いんじゃないか?」

「お前のそういうとこ嫌だ」

「ごめん。嫌とか言うなよ。でもそうだろ、接触を避ければすむだろ」

「そう簡単に済んだらこんなこと言わねえだろ」

「うーん、でも隼人がなんとかしてほしいなあ」

「あーだめだだめだ。結局変わんねえわ」

「どうすれば良いかな」

「知るかよ」

「どうして欲しい?」

「……あ、ビデオ録画すんの忘れた」

「何の?」

「あー、何か映画?ほら、今日やるだろ、あのキツネのやつ。

キャロに言われてたの忘れてた」

「アルに頼めば」

「多分キャロと一緒だからな。家に居ねえと思う」

「あー、じゃ仕方ないな」

「ま、いっか」

「それ、武士がDVDもってんじゃないのか?」

「あーそれは有り得る。動物もん好きそうだよな」

「だよな」

「あ、ビデオで思い出したけど、前言ってたCD、あったぞ」

「マジ?」

「ああ、母さんが持ってた。また貸す」

「ラッキー。借りに行くのめんどくせーし、買う金ねえし」

「それで、なんだっけ」

「ああ、えーと、そうそう、お前をどうするか」

「俺をどうするかって…俺に選択権とかないのか?」

「ねえこともねえ。でも、これは微妙」

「微妙って…そのニュアンス良く分からないんだけど」

「俺も良く分かんなくなってきた。でもそのニュアンスとか」

「嫌なのか?」

「うん、何か嫌だ。気取ってる感じがする」

「……そんなつもり全然ないんだけど」

「やっぱお前落ち着きすぎてるんだよな」

「そうか?」

「ああ、多分そうだ。だから嫌なのかも」

「嫌とか言われるとほんと傷つくなあ…」

「うーん、俺も嫌だ」

「どうしようかなあ、俺は全然隼人のことそういう風に思ったこと無んだけど」

「そんなっつーと?」

「きらいとか」

「や、高槻それは違う。俺は別にお前のこと嫌いだって言ってるわけじゃねえ」

「そうか?十分そういう風に聞こえるぞ」

「怒らしたんなら悪ぃ」

「いや、別に。怒ってるとかじゃないよ」

「じゃいーや」

「良いのかよ…」

「あ、高槻アメ食う?」

「あ、うん」

「何が良い。好きなん選べ」

「じゃ俺これがいい」

「あ、俺もそれ好き」

「気が合うな」

「何かさ、青とか緑とかうまそうな気がしねえ?」

「あーなんとなく分かる」

「あ、ゴミは自分家で捨てろよ」

「ああ。隼人もその辺捨てるなよ」

「そんなこと俺がするわけねーだろ」

「嘘つけ、今日の昼にガムの包み溝に投げたろ」

「げ、何で知ってんだよ」

「ははは、甘いな」

「お前、俺のこと見過ぎだから」

「隼人が言えるもんでもないだろ。だってノート取ってるのとか見てるんだろ」

「見てるっつーか勝手に見えんだよお前は」

「わけ分かんないんだけどそれ」

「ちげーんだよ、何か気になるっつーか勝手に視界に入ってくんだよ」

「それを世間一般見てるっていうんだよ」

「なんだろな、お前って」

「なんだってなんだよ」

「分かんねえ。つかなんか殴りたくなってきた」

「俺をか!?」

「うん、そう高槻を」

「……それは勘弁してくれ。しかも結構マジだろ」

「うん。一回だけ」

「いやだ。隼人強いから」

「そしたらスッキリしそうな気がする」

「気がするだけだろ。…でも、手のひらに一発だけなら」

「えー俺顔が良い」

「いやいやそれはほんとに痛いから駄目だ」

「じゃ手のひらで良いや。顔の横ぐらいに出せ」

「とか言いながら顔殴るとか無しだぞ。隼人強いんだからな?分かってるか?」

「わーかってるって」

「力抜けよ?」

「わーかった、わかったって」

「……痛い…」

「なんだ、あんまどってことねえな」

「ほら見ろ。別に何にも変わんないだろ」

「いや、ほんのちょっとはスッキリしたかも。

それにちゃんと手のひらに打ったんだから良いだろ」

「でも痛かった」

「なんだよ人より頑丈だったんだからぶつくさ言うな」

「その人より頑丈だった手で殴られたんだから」

「でもそれってプラスマイナスゼロなんじゃねーの」

「言ってることの意味が分からない」

「あ、そう?」

「そのうち電車来るぞ」

「喉渇いた。俺なんか買ってくる」

「あ、ついでに俺のも」

「何がいいんだよ」

「お茶。種類はなんでもいい。金は?」

「ばーかそれぐらい持ってるっつーの。オゴリオゴリ」

「急げよ」

「……ほれ」

「隼人、俺に聞いた意味無いぞ。これミルクティーじゃないか…」

「そうそう新商品。一口くれ」

「先に飲めよ…あれ、結局隼人が飲みたかっただけじゃないか」

「ん。…うわ、これすげえ甘いぞ」

「そうか?……ほんとだな」

「でも隼人好きだろ。甘いの」

「うん、好き。美味しい。もう一口」

「ほら」

「…土曜なのに人少ねーな」

「土曜だから少ないんじゃないかな」

「皆家でメシ食って、テレビとか観てんのか」

「だろうなあ…」

「あ、なあ今日このままお前ん家泊まって良いか?」

「良いけど…嫌なんじゃなかったのか俺のこと」

「何かどうでも良くなってきた」

「お前のなかで俺はそんなもんなのか!」

「あーそうかも」

「…酷いなあ隼人。さんざん人を痛めつけといて」

「あー嫌なの復活しそう」

「ごめんなさい」

「それでよろしい」

「………」

「………」

「好きだよ、隼人」

「ん、俺も」



手も握らずに。高槻家の団地に着いたのは、22時前のこと。






















●Back Ground Music:ASIAN KUNG-FU GENERATION『ブルートレイン』
たかつき恥ずかしいよ…!という話が書きたかったんですとか言っておきますもごもご…
2006/11/04 

<<<