Reine de glace
しかしジャンは絶望した。何てことだ。やはりそこには何もなかった。だだっ広く、その胸の喪失感にも似た真っ白な世界が広がっている。ここまで彼を案内したこの辺りの支部の作業員らは不思議そうに立ちすくむジャンの背を見つめ、あまり遠くへは行かないようにと言った。
そしてふとジャンは馬鹿らしくなってしまった。望んだものがこんな所にあるはずが無い。それではここに来るまでのあの焦りと期待は何であったのだろうか。
思えば自分はあのような喪失感を日々抱えて生活をしていたような気もする。そうに違いない。日々退屈な繰り返し。当たり前のように朝日を迎え夕日を見送り、たまに任務については何事も無くこなして飯を食う。そんな暮らしをしていたのだ。しかし彼は頭でそう考えてはいてもどうしても納得をしていなかった。こんな所に何があるというのだろう。
それなのに彼はゆっくりと歩みをすすめ、いつしか小走りになりながら周囲を見渡し白い息を吐いた。そうしてついに走りだした。何かがうっすらと浮かびかけては消えた。しかしそれはほとんど確信のようだった。浮かんでは消え、消えては浮かんだ。そうしていつか完全なる確信に変わる頃、大きな氷山が美しい音で軋んだ。彼は青年の名前を叫んだ。
氷の女王は、賭けに負けた。
20070628 日記で書いたやつです。
お付き合いありがとうございました。どこまでも広げられる話だけれど、暗いお話だから、ここまで。
いつかもっと肉付け出来れば、出来るほどにできれば、良いなあとは思うけど。