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「お帰りなさい」
「ただいま姉ちゃん。だめだ、キャベツが少し干からびてるんだぜ」
「まあまあ、それは残念」
にこにこしながらバスケットを受け取るとキッチンへ持ってゆき、早速洗って切って背の高いなべに放り込む。今日はキャベツとたまねぎとニンジンとベーコンのシンプルなコンソメ・スープ、こんがりと焼いたチキン、それから昼に買ってきた柔らかいパン。
「チキンをね、いつもより沢山焼いたのよ」
「いいね」
「優ちゃんのいい人に持っていっておあげなさいな」
「本当? いいの?」
勿論よ、と楽しそうに笑い、言う。秋葉姉ちゃんは良い姉ちゃんだ。みんな知ってるのに、みんな黙って、みんな手伝ってくれる。寂しいオオカミに、差し入れをくれるのだ。
「もうチョコレートバーは無かったっけ?」
「あれはもう無かったんじゃないかしら。代わりにナッツのクッキーになさい」
早速野菜を出した後のバスケットを持ってきて、丁寧に包んだチキンやクッキーを入れる。少しパンも入れた。コトコトとスープのなべが鳴って、コンソメの匂いが漂う。
足跡がつかないよう、早くお行きなさい!
チキンが冷めないよう急いで家を出る。
少し久しぶりだ。元気にしているだろうか。きっと眠そうにしながら扉を開けるに違いない。ジャンは日が傾くとすぐに眠ってしまう。前に、起きていたって退屈なだけだからなと寂しそうに言うのを聞いた。だから優はあえて夜にジャンのところへ向かうのだ。退屈な夜を、ちょっと特別にしてやるために。
ゆらゆらとランプの光が照らし、ぬくぬくと暖炉で暖まった部屋から眠そうに目をこすりながら出てきて、ぱっと顔を輝かせるジャンの綺麗な瞳の色を思い描く。部屋に招き入れてくれたジャンは、きっと牛乳を温めて出してくれる。
優はジャンが誰かすぐに分かるように、いつも真っ赤なマフラーを巻いて、その先っぽを、まるでケルトの祭りの日の火の粉のようにひらひらとさせながら家を出る。そうして森の中の細い煙突のある小さな家を目指すのだ。
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