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「だから、もう、ここには来ない方がいいって」
「…そう」
ジャンはバスケットの中を覗いて申し訳なさそうにしてから、顔を上げありがとうと嬉しそうに笑った。良ければ一緒にどうだと誘われたが、それ以上その場にいると何かひどいこと言ってしまいそうなので、なんとか出されたカップの中身を飲み干すと家を出た。
ジャンは寂しそうに微笑み「気をつけて帰れ」と、自身よりも一回りほど華奢な背中を見送った。
どうしよう、どうすればいい?
このままじゃ、ジャンは俺の知らないどっかに行っちまう
うるさい街のやつらのせいで、と弱弱しく下を向いたまま言う。テーブルのスープを見つめたまま動かない優を悲しそうな顔で見つめていた姉は、ふと打って変わって強い声で言った。
「優ちゃんはどうしたいの?」
「俺は…」
「ジャン君にここに居て欲しいの?」
「ジャン君がここに居て、他の人間に殺されそうな目に遭わされても良いの?」
「違う…俺はそんなこと望んじゃいない」
ただ一緒にいるのが楽しいのだ、と。
いろいろなことを話すこと、食事をすること、トランプをすること、昼寝をすること。歳の離れた姉には決して許してもらえそうも無い、乱暴な冗談や思いつき。ジャンは優が欲しいものをたくさん持っている。
がっくりとうなだれるとひじがスプーンを押しやり、食器とぶつかってチーン、と音を立てた。するとそれを秋葉は先ほどとは違った、何故かとても満足そうな笑顔で見ていた。
「それなら一緒に居ればいいじゃないの」
「どういう意味?」
「一緒に居たいってジャン君に言ったの?」
いいや、と首を振る。
じゃあそれを言わなくちゃ、と秋葉はチェックのロングスカートと白いエプロンを揺らして笑った。だけれど、私はあなたの姉だから、未成年のあなたを直接非行に導くわけには行かないわ。
いい? ヒントをあげましょう。一言も漏らさずよくお聴きなさい!
秋葉は不思議そうにする優の目の前にぴん、と一本人差し指を立て、それからまるで何か乱暴な秘密の話をするときのように、そっとひとつずつ優に話して聴かせた。
曰く、欲しがる素振りを見せているだけは、お馬鹿さんの損しいだ、と。
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