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 がさがさと、勢いよく、その大きなトランクを引きずって。
赤色のマフラーはひらひらとはためく。フクロウのじいさんが低い声でほうほうと行き先を訪ねるのをそのまんま無視して、優は急いである場所を目指す。いつもの小道に出る。ただひたすら早足で歩いていく。
 途中、冷えた手の甲をいたずらものの細くて鋭い葉に浅く切られてしまったがしかし、そんなことを気にしている場合ではない。どんどんどんどん歩いていく。



 ひとつ 私は今夜出掛けて、10時まで帰らないということ。
 ふたつ 寝室の一番大きなチェストの一番手の届かないところに、
      あなた名義の貯金通帳が入っているということ。
 みっつ 今夜9時から夜行列車がここを出発するということ。
 よっつ ピーナッツバターがキッチンの戸棚に入っていて、
      夕食のパンの残りがテーブルにあるということ。
 いつつ 彼はその耳と尾のせいで目立ってしまうということ。
 むっつ 今夜は集会で、街の人たちが中央広場に集まるということ。
 ななつ 時間がないということ。
 やっつ あなたのお家は、最初から最後までここにあるということ。
 ここのつ あなたのいい人には、それがないということ。
 とお そしてあなたの姉は、いつでもあなたのことを愛しているということ。



「ジャン!」


 ドアの前で大きな声で呼ぶ。
 すると中で何かがどこからか落っこちる音がして、ややあってからドアが軋んで開いた。なんだ、と低い声がする。すっかり草臥れた青い目が、少ない隙間から覗いていた。



 最後にひとつ。彼はあなたがだいすきで、あなたも彼がだいすきなのよ。
















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